AIで戦場を一元管理 米陸軍、同盟国と大規模演習

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2026年7月24日、カリフォルニア州フォート・アーウィンにて、プロジェクト・コンバージェンス・キャップストーン6の一環として、第4歩兵師団第3機甲旅団戦闘団第8歩兵連隊第1大隊ブラボー中隊に所属する兵士たちが、エンドユーザー端末の設置計画を立てている。(米陸軍撮影:ジョナサン・レイエス特技兵、DVIDShub経由)

2026年7月24日、カリフォルニア州フォート・アーウィンにて、プロジェクト・コンバージェンス・キャップストーン6の一環として、第4歩兵師団第3機甲旅団戦闘団第8歩兵連隊第1大隊ブラボー中隊に所属する兵士たちが、エンドユーザー端末の設置計画を立てている。(米陸軍撮影:ジョナサン・レイエス特技兵、DVIDShub経由)

By John T. Seward – The Washington Times – Thursday, August 6, 2026

 【フォートアーウィン基地(米カリフォルニア州)】敵の無人機が、砂漠に造られた市街地を模したコンクリートブロックやベニヤ板、コンテナ製の建物群の上空を飛行し、搭載したカメラで地上を監視する。

 地上の米陸軍部隊は大量の煙幕で無人機の視界を遮りながら「模擬市街地」へ接近し、銃撃戦を想定した訓練の中で刑務所を模した建物群を制圧していく。

 演習ではさまざまなレベルの軍幹部らが戦況をリアルタイムで見ている。最前線で戦う部隊長でさえ胸部に装着したスマートフォン大の端末を見れば、自身の位置や現在いる建物、周囲の味方部隊、さらには敵部隊の予想位置まで一目で確認できる。

 このような未来型の戦場が、モハーベ砂漠に再現されている。米陸軍は総額30億ドル(約4500億円)を超える人工知能(AI)統合型デジタル通信システム「次世代指揮管制(NGC2)」のこれまでで最大規模となる実証試験を行った。

 演習は「プロジェクト・コンバージェンス・キャップストーン6」と呼ばれ、1000平方マイル(約2590平方キロ)を超える砂漠地帯を舞台に、摂氏43度を超える酷暑の中で、部隊同士が交戦する想定で、大規模訓練を実施し、新システムの性能を徹底的に検証した。

 陸軍首脳によると、狙いはAIを活用した新たな通信・情報処理能力によって、作戦立案や情報収集、目標選定、補給を大きく変える未来の戦争に備えることにある。

 ワシントン・タイムズの安全保障専門チーム「スレット・ステータス」は演習を現地取材した。そこでは、わずかな情報も逃さず取り込まれ、指揮官の判断に生かされる。

■米同盟国も参加

 演習は主にNGC2システムのテストのために実施された。陸軍の戦場通信網を全面的に刷新するものだ。旧式化した従来の指揮通信装備に代わり、多数の防衛技術企業が提供する既製品と専用機器を組み合わせた新たなシステムを構築する構想だ。

 第4歩兵師団のパトリック・エリス司令官(少将)は、ワシントン・タイムズの取材に対し、このシステムによってAIをはじめ急速に進歩する技術に柔軟に対応することが可能になると語った。

 「完璧ではない。しかし、実戦投入できる段階には達している」とエリス氏は語った。すぐにでも配備し、戦うことはできる。ただ、まだ完成形ではない」

 NGC2は、陸軍が既製品を本格的に採用する初めての取り組みの一つでもある。従来のように特注品の完成を長期間待つ必要がなく、市販技術を迅速に導入できる。

 今回の試験までの数カ月間、第4歩兵師団と陸軍未来コンセプト司令部は、防衛企業の技術者を演習場へ招き、兵士から直接意見を聞きながら開発を進めてきた。

 しかし、今回の「プロジェクト・コンバージェンス・キャップストーン6」では状況が異なった。開発企業の担当者は現場に入らず、陸軍だけでシステムが実戦運用に耐えられるかどうかを検証した。

 演習には英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの部隊も参加した。参加兵力はフォートアーウィン基地で実施された演習としても過去最大級となった。

 未来コンセプト司令部を率いるマイケル・マカリー中将は「演習区域には約9700人の兵士が展開した。多くの無人機のほか、機械学習やAI、意思決定支援ツールなど90種類を超える技術を試験した」と語った。

 マカリー氏ら陸軍首脳は、今回の試験は成功だったと評価している。重大な技術的障害が生じない限り、NGC2は開発が継続され、将来的には陸軍全体へ導入される見通しだ。

■「神の計算機」

 システムに組み込まれたAI対応のソフトウエアは、現場の兵士から「神の計算機」と呼ばれている。

 「すべてのデータが一つの場所に集まっている。これまでと違い、それぞれが独立したシステムに分断されていない。そうした壁を取り払い、すべてのデータを一つの場所に集約した」とエリス氏は語った。

 これにより、公開情報、機密情報、同盟国から得た情報を1つの情報基盤に統合し、指揮官だけでなくAIも利用できるようになる。遠隔地にいる部隊も例外ではない。これらはクラウド上のコンピューターと現地のコンピューターを組み合わせて運用され、「データレイヤー(層)」と呼ばれている。

 こうしたデータの統合は、昨年NGC2の試作システムの開発が始まるまで、陸軍にはできなかった。それまでは、情報が個別のコンピューターに分散して保存されていることが多かった。例えば、砲兵やミサイルなどの地対地兵器用のコンピューター、目標選定や情報収集のための専用システム、兵站計画用の別のソフトウエアなど、それぞれが一つの任務を遂行するために設計されていた。

 現在、こうした個別の処理は「アプリケーションレイヤー」と呼ばれる仕組みに組み込まれている。

 マカリー氏は「専用システム同士をつなぐのではなく、実際にはシステムをデータレイヤーにつないでいる。共有すべき情報は共有し、国家として保護すると決めた情報は保護できる」と語った。

 これらすべてを支えているのが、陸軍が「伝送・統合」と呼ぶ仕組みだ。

 統合とは、さまざまな形式のデータをシステム全体で利用できるように変換することだ。例えば、衛星画像から得た敵の位置情報をGPS情報と組み合わせ、個々の指揮官が手元の小型画面で確認できる地図上に正確に表示する。

 伝送では、さまざまな種類の無線機や衛星通信から得られるデータ、無人機が収集した情報などをつなぎ合わせ、安全性の高いクラウドコンピューティング環境へ送る。

 このシステムには、これまで米特殊部隊や特定の任務でしか利用できなかった装備が統合されている。例えば、ニューヨーク州に拠点を置くパーシステント・システムズが製造するメッシュ無線機「モジュラー・ポータブル・ユニット5(MPU5)」がある。遠隔操作でシステム全体を再プログラムできる高度な戦術通信機だ。また、カリフォルニア州に拠点を置くスペースXが提供するスターリンク型の衛星通信システムも含まれる。

 NGC2では、こうした装備を通じて送られる情報が、AIを中核とするリアルタイムのモデル化システムにも同時に接続される。

■砂漠での戦闘

 模擬市街地への突入を指揮していた部隊の指揮官らは、敵の無人機が突然砂漠上空に現れると緊張を強めた。市街地制圧を指揮したアレックス・バイヤー大尉は、無人機が自隊の位置を特定し、砲撃を誘導することを最も警戒していたという。

 バイヤー氏は「まずい、砲撃を要請される」と思ったという。敵はドローンの映像を見ながら攻撃できる兵器を持っている。だから「急いでこの建物に入らなければと考えた」と演習を振り返った。

 同氏は、部隊には対無人機能力がほとんどなかったが、NGC2が役に立ち、問題に対処できたと語る。敵無人機の位置を地図上で確認できたため、地形を利用して、建物に素早く入ることができたという。

 胸に装着したスマートフォン大の端末を見ながら、無線で部下に指示を出した。

 「とても役に立った。小隊長たちの位置情報が自動で表示された。建物一つ一つにラベルが付いているので、大きな地図を広げて場所を探したり持ち歩いたりする必要がない」

 画面には部隊の位置がリアルタイムで表示され、敵との交戦報告も瞬時に反映された。建物ごとに隣接部隊と連携しながら、一棟ずつ制圧していった。

 さらに、その情報は上位の司令部とも共有され、砲兵や航空支援が味方部隊を誤射しないよう射撃範囲を調整することも可能になった。

 バイヤー氏は「司令部にとっても非常に有益だった。最前線の位置を把握しながら、戦闘全体を指揮統制できるようになる」と話した。

 一方、敵役を務めた部隊の指揮官も、その効果に驚いている。

 演習で敵部隊を率いたモハメド・エルマオラ大尉は「想像以上に各部隊の連携が取れていた」と語る。

 同大尉は「異なる部隊がここまで短時間で相互運用できるとは思わなかった。本当に印象的だった」と強調。多国籍旅団6個大隊の連携を崩すことを目指したが成功しなかったという。

 英国、オーストラリア、ニュージーランド、米国の兵士で構成された部隊は、NGC2を使って連携し、街を攻撃した。

 エルマオラ氏は「市街地への攻撃は予想以上に統制が取れていた」と語る。

 これこそがNGC2の狙いだとエリス氏は強調する。味方と敵の位置をリアルタイムで確認できる共通の地図を指揮官全員が共有することで、AIを活用した作戦立案や目標選定を大幅に迅速化できるという。

 「『私はここが気になる』『君はそこを警戒して』と互いに話し合いながら、画面上へ直接書き込み、共同で作戦を練ることができる。2年前のこの師団では到底できなかったことだ。私にとっては画期的な進歩だ」

 指揮官同士がリアルタイムで戦術を協議する一方、画面には敵部隊の位置や能力を示すアイコンが次々と表示される。戦場各所のセンサー情報をAIが分析し、脅威評価も同時に行う。

 さらに機械学習モデルへデータが送り込まれ、「この判断をした場合、どのような結果になるか」を予測することも可能だ。弾薬や燃料の残量まで考慮しながら、成功率や失敗率を数値として提示する。

 エリス氏は「もちろん予測モデルは完璧ではない。だが、それは過去の演習でも同じだ。昔は地面に広げた大きな地図を囲み、サイコロを振りながら、木製のブロックを動かしていたのだから。AIは問題を整理し、解決策を考える助けになる。そして同じ場所に集まらなくても共同で意思決定できるようになる」と語った。

■消費電力という課題

 NGC2の開発には40社以上の民間防衛企業が参加している。全体を統括するのが、国防総省でNGC2計画の調達責任者を務めるジョー・ウェルチ氏だ。

 同氏はフォートアーウィンで報道陣に対し、競合関係にある企業同士が協力し合い、さらに開発企業が演習現場で兵士から直接意見を聞ける体制を整えたことで、開発期間は大幅に短縮されたと説明した。

 「これこそ成功の秘訣だ。陸軍改革と調達改革が成果を挙げた証しでもある」とウェルチ氏は語る。

 企業側も同様の見方を示し、防衛産業に新たな協業の時代が到来したと評価している。

 NGC2の開発当初から参加しているソフトウエア企業「Air」の最高経営責任者(CEO)、タラ・マーフィー・ドハティ氏は、「NGC2が大きく前進した最大の理由は、陸軍が次世代計画の進め方そのものを変えたことだ」と語る。

 同社は国家安全保障分野の補給・調達を得意とし、AIによる予測補給機能を早い段階からNGC2へ組み込むよう提案してきた。

 食料や燃料、弾薬が不足する前に必要量を予測し、補給要請が何段階もの指揮系統を経ることで生じる遅れを解消することが狙いだ。

 「陸軍が『私たちにはこうした課題がある。解決策を提案してほしい』と企業へ呼び掛けたことが、すべての出発点だった」と同氏は話す。

 こうした手法は、民間IT業界の製品開発に近い。

 企業は市場の需要に応じて製品を開発し、新たな技術や市場環境の変化にも素早く対応する。その考え方を軍事分野へ取り入れた形だ。

 もっとも、NGC2にはなお解決すべき課題も残る。今回の模擬市街地演習では、消費電力の大きさや高温環境による機器への影響が問題となった。

 敵部隊指揮官役を務めたエルマオラ氏は、「NGC2が必要とする電力は決して軽視できない。特に砂漠のような厳しい環境では深刻な課題になる」と指摘する。

 バイヤー氏も、演習で使用したMPU5無線機の一部に不具合が生じたと明かした。「以前ならバッテリーの充電は2時間程度で済んだが、この日は6時間かかった。それでも充電できないものもあった。暑さが原因だ」

 高温は多くの新型装備に影響を及ぼした。兵士たちは予備バッテリーを携行していたものの、途中で使えなくなり、「荷物の重し」にしかならなかったケースもあったという。

 一方、現場では即席の工夫も生まれた。ある部隊ではTシャツを冷水でぬらしてスターリンクのアンテナに巻き付けたところ、装置の温度を素早く下げることができた。

 エリス氏は「民生技術を使う以上、軍仕様へ全面的に改良し、耐久性を高めるべきなのかという問題が出てくる。陸軍全体に、高価で大型の冷却装置のような本格的な設備が必要とも思えない。茶色のTシャツと氷水で解決できるなら、それでも十分かもしれない」と語った。

 同氏によると、今回の演習で得られた知見は、次にNGC2の配備を進める第1軍団へ順次引き継がれていく。

 「この技術は今後も進化し、改良を続けていける。現時点でも陸軍へ提示できる試作システムとしては十分満足している」と自信を示した。

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