認知症や精神障害、知的障害などで判断力が不十分な人をサポートする「成年後見制度」。ですが、2000年に施行されて以来、家族や行政など当事者間ではトラブルも相次いでいます。
家族や自分自身、今は判断力に問題がなくても、将来において認知症になる可能性もあります。そんな時、金銭管理などをサポートしてくれるはずの成年後見制度ですが、一体どのようなトラブルが起きているのでしょうか。
“虐待疑惑”で母が連れ去られ「お骨になって帰ってきました」
批判が多い成年後見制度に対し、問題提起するマンガ『連れ去られた母は、お骨になって帰ってきました。~成年後見制度の隠された真実~』(漫画:鶴屋なこみんさん シナリオ制作:山口じゅりさん 原案:長谷川学さん 監修:森脇淳一弁護士)が竹書房から出版されました。
版元は、このマンガのストーリーは「シナリオを手掛けた山口じゅり氏の実体験や、ジャーナリストである長谷川学氏が被害者家族から得た生々しい証言など、実際に起こった事例に基づいている」としています。
作品で描かれている様々な成年後見制度をめぐるストーリーの中には、作品タイトルになっている通り「突然消えた母は、お骨になって帰ってきました」と嘆きの言葉を口にする女性のケースも。
その女性は、軽度の認知症の母親を介護しながら実家で二人暮らしをしていたところ、靴下のたたみ方についての口げんかを隣人に“虐待疑惑”と市役所に通報されました。通報をきっかけに、家計を一緒にしていたことを“母親のお金の使い込み”とみなされ、 弁護士が後見人になりました。
弁護士が“娘には会わせない”と判断したため、母親は、自分で建てた愛着ある我が家にも帰ることができず、施設で孤独に暮らすことになりました。女性には、母親が暮らす施設の場所も教えてもらえず…結果、死に目にも会えなかったということです。
本書には他にも、弁護士などの士業後見人の横暴な運用で、家族が引き離されたり、本人の自己決定に反する処遇をされ苦しむケースなどを描いています。
財産管理、身上保護がむずかしい場合や、悪徳商法の被害にあうおそれ⇨支援制度
負の側面がある一方で、成年後見制度の意義はどのようなものでしょうか。
厚生労働省は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で「ひとりで決めることに不安のある方々を法的に保護し、ご本人の意思を尊重した支援(意思決定支援)を行い、共に考え、地域全体で明るい未来を築いていく。それが成年後見制度」だと説明しています。
具体的な例には「財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続など)や身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認など)などの法律行為をひとりで行うのがむずかしい場合」や、「自分に不利益な契約であることがよくわからないままに契約を結んでしまい、悪質商法の被害にあうおそれ」を挙げています。
また、弁護士をはじめとする家族・親族以外の士業後見人が問題視されていますが、厚生労働省は、後見人等の不正について「平成26年をピークに不正の件数・被害総額はいずれも減少を続けている」とした上で、その減少理由として「親族後見人へのガイダンスや後見制度支援信託・預貯金の活用など不正防止に向けた裁判所の一連の取組が一定の効果を上げていると考えられる」としています。
改正民法成立で「やめられる」ように。残る課題も
成年後見制度を抜本的に見直す改正民法が、6月17日に成立しました。本人の権利を大きく制約し、同時に利用をやめられない制度への批判が今回の見直しにつながりました。成年後見制度の見直しは2028年度中に施行される見通しです。
それでは、どのような点が改正されたのでしょうか。
法務省は「後見及び保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化して本人にとって必要な範囲でその利用を可能とすることや、遺言制度について、電子データ等で作成し、法務局において保管する保管証書遺言を創設することなど」としています。
大きなポイントとしては、現行が一度使い始めたら事実上“終身”であったのに対し、改正民法では、必要がなくなれば利用をやめられる仕組みになっています。
今回の改正の背景には、トラブルの多発や批判の声に加え、国連の障害者権利委員会から2022年に「意思決定を代行する制度を廃止する観点から、全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、全ての障害者が、法の前にひとしく認められる権利を保障するために民法を改正すること」という勧告がなされたことも背景にあります。
法改正はされましたが、本当に安心して利用できる制度になるかは、今後を見守る必要があるといえるでしょう。
改正時の国会の付帯決議では、本人の意思を最大限に尊重することや、裁判所の人的体制の整備、本人を支援する施策の充実、関係機関の連携強化を求めています。
しかし、朝日新聞によれば、家庭裁判所などが受けた家事事件は、この30年で約3倍に増えており、それには成年後見関係の事件が増えたことが背景にあるといいます。現場の人手不足をはじめ、まだまだ課題は多いようです。

2 時間前
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