日本人ファーストから1年。日本と、世界で起きたこと(保存して半年後、1年後、5年後、10年後に読み返すために)

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来月(2026年6月)で、私たちが「日本人ファースト」という言葉を目にしてから1年となる。 

この1年、本当にいろいろなことがあった。

まさか1年前、アメリカとイスラエルがイランを攻撃するなんて思いもしなかったし、ホルムズ海峡が封鎖されることも、ポテトチップスの袋が白黒になることも想像すらしていなかった。

それだけではない。ハンガリーで反移民・反グローバル・自国第一主義を掲げるオルバン首相が政権の座を追われることなんて、そしてイギリスで反移民のリフォームUKがこれほど劇的に議席を伸ばすことなんて、思ってもいなかった。

そうして何より驚きなのは、1年前、誰も予想していなかった「高市首相」の誕生だ。

しかし、政権発足から半年以上経った現在も支持率はそれなりの高水準を保っている。中国との関係を悪化させても、武器輸出を解禁させても急降下とはならない。

一方、2月からこの国では反戦や改憲反対を訴えるデモが燎原の火のように広がっている。が、それが全国130箇所を超える地域で開催され、国会前に3万人が集まるほどのムーブメントになっているにもかかわらず、受け皿となる野党はない状態。もちろん、現場には野党議員の姿もあるものの、世論調査を見れば政党支持率は驚くほどに微動だにせず。デモはデモとして独立しているという新しい現象に思える。

忘れてはいけないのが、そんなデモがあることも、そして高市政権の是非にも特に関心がないという膨大な層。一方で、SNSには外国人叩きの言説が溢れている。

なんだか一昔前と比較して、それぞれがパラレルワールドに住んでいるような状況ではないだろうか。

それではこの1年、何が起きたのか。振り返ってみよう。

昨年6月から10月にかけて何が起きたかは、昨年11月公開のこの原稿で詳しく書いたので、興味がある人は読んでほしい。

ざっと振り返ると、例えば昨年6月には「東京・板橋のマンションオーナーが中国系に変わって家賃が2.5倍に。さらに民泊に転用?」という報道があったり、アメリカで移民取り締まりに抗議するデモに州兵が派遣され、「暴徒化するデモ隊」や「燃やされる車」なんかの映像が多く拡散されるということがあった。また、SNSでは「ルールやマナーを守らない外国人観光客」といった投稿が目立つようにもなっていた。同時期、この国は深刻な米不足の状況にあった。

そんなところに降ってわいたように現れた「日本人ファースト」。おそらくそれは、「失われた30年」で自信を失っていたこの国の人々の何かに火をつける作用があったのだろう。

そして25年6月15日、3つの市議選で参政党候補がトップ当選。22日の都議選で3議席を獲得。さらに7月の参院選で14議席を獲得した。

特筆したいのは、この参院選で自民党が突然「違法外国人ゼロ」というスローガンを掲げたことだ。このキーワードは政権与党の強烈な「お墨付き」となり、「日本人ファースト」という言葉が登場するまで影も形もなかった「外国人問題」が完全に既成事実化。「外国人叩き」が正当化されるトドメの一撃となった感がある。

8月には「アフリカホームタウン」騒動が起き、9月には「東京都エジプト合意」をめぐって「移民を受け入れるのか」と反対の声が上がり、都庁前で「東京都エジプト合意撤回デモ」が開催。

そして10月、自民党総裁選で高市氏が勝利。この総裁選において、高市氏は奈良の鹿を「外国人が蹴り上げる」など元迷惑系チューバーの言説を鵜呑みにしているかのようなことを発言。「このタイミングでそれ言うの?」と多くの人々を不安にさせた。

10月21日、高市政権が発足。日本初の女性総理と注目を浴びたが、就任直後、高市総理は「不法滞在者対策の強化」を法務大臣に指示。また高市内閣には「違法外国人ゼロ」の顔とも言える小野田紀美氏が入閣。外国人担当大臣なるポストが新たに作られ任命される。

11月4日には外国人政策に関する関係閣僚会議が改組され、初会合。「政府の司令塔強化」のもと、政府が議論を本格化させる運びとなる。

検討課題として挙げられたのは、外国人による土地取得の厳格化や帰化の厳格化、オーバーツーリズム対策、治安対策、外免切り替えの厳格化、博士課程の大学院生への生活費支援の停止や高校授業料無償化の対象から外国人学校の生徒や学生の排除など。また国保や住民税、医療費の未納を防ぐとし、生活保護の「適正化」などもテーマとなった。

このようなことによって「外国人が各種制度にただ乗りしている」といった言説も広まった感があるが、例えば医療費の未払いはわずか1.5%。生活保護に至っては、外国人はそもそも対象外。準用の対象となるのは永住定住等の在留資格を持つ人のみで、利用率はわずか3%。それらの事実があるにもかかわらず、「適正化」という言葉は「不正利用」というイメージを招いたのだった。

このような「外国人政策」について語られるたび、必ずと言っていいほど用いられる言葉が「不安や不公平感」。これに対処するとして外国人政策の「厳格化」が強硬に推し進められていった。ちなみに外国人受け入れに関しては10月、自民党と維新の間の連立合意で「受け入れ制限」が明記されている。

11月27日には、外国人政策に関して、政府の「外国人との共生社会実現のための有識者会議」が初会合。

一方、11月11日には自民党が高市首相の直属組織として新設された「外国人政策本部」の初会合が開催される。出入国・在留管理の適正化や外国人制度のあり方などを議論するとのことで、新藤義孝本部長は「外国人比率が高まる中、一部の外国人による迷惑行為などが社会的不安を呼んでいる」と指摘。「不安や不公平感」と並んで「一部の外国人による迷惑行為」もよく使われるようになった言葉だ。また、小野田外国人担当大臣によって「ルールを守らない外国人」という言葉が会見などで繰り返されたことも社会に大きなインパクトを与えた。

11月はじめには、国民年金や健康保険料などを滞納した外国人に対し、27年6月から原則として在留資格の更新を認めない仕組みを導入することが報じられる。

そんな在留資格に関しては、26年3月10日に閣議決定された入管難民法改正案で手数料の上限引き上げなどが盛り込まれた。結果、在留資格の更新・変更は現在の6000円から最大10万円への大幅値上げとなり、また永住許可の手続きは1万円から20万円程度と突然の20倍アップ。外国人への負担爆上げとなった。

11月末には、外国人の医療費未払いについて新たな厳格化が示される。それは入国審査のため、入管に共有される情報について。現在は医療費未払いが20万円以上ある外国人の情報が共有されているのだが、26年度からその額を1万円に引き下げるというものだ。

もうひとつ、この頃進められた「厳格化」がある。

それは「経営・管理」の在留資格の取得要件。これまでは「500万円の資本金」か「2人以上の常勤職員」のいずれかを満たせばよかったのが、「3000万円の資本金」と「1人以上の常勤職員」いずれも満たさなければならなくなった。また、日本語能力試験において、二番目に難しいN2以上の認定という要件もできた。

厳格化の理由として持ち出されたのは、外国人によるペーパーカンパニー対策。が、政府は実態調査をしたわけでもなく、25年10月、入管によって突然変更された形だ。これによって、「経営・管理」の新規申請は96%減。数十年にわたって日本で飲食店を経営してきた外国人のビザが更新されなくなるなどの事態が起きている。

ここまで書いたような急な制度変更に対して思うのは、「ルールを守れ」と言いながら、到底守れないようなルールに変更しているのは大問題ではということ。また、実態調査もせず当事者の声も聞かずに一方的に重要なことを変更することこそルール違反では、ということだ。

話を時系列に戻そう。10月26日には宮城県知事選が投開票日を迎えたが、もはや選挙戦というよりも「土葬」や「メガソーラー」をめぐるデマとの戦いになっていた。

「何と向かい合っているのかという違和感があった」

この言葉は、24年11月の兵庫県知事選に出馬し斎藤元彦氏に敗れた稲村和美氏のものだが、この辺りから選挙は「デマとの戦い」となり、政策より誰を・何を信じるかの踏み絵となり、また切り抜き動画で一部が荒稼ぎする場に歪められていった。

そんな選挙で6選となった村井知事が苦しめられたのが、誤情報。

村井知事は24年10月、外国人共生の観点から土葬整備を調査、検討する考えを発表したものの反対意見もあり25年9月に白紙撤回。また仙台市秋保地区で民間業者が計画しているメガソーラー事業について反対姿勢を明言しているものの、選挙期間中、SNSには「メガソーラー推進」「土葬墓地を作り移民受け入れを進める」などの言葉が溢れた。

知事選で二番手についたのは、参政党の神谷宗幣氏が何度も現地入りして応援した和田政宗氏。もちろんこの陣営も選挙期間中、土葬やメガソーラーについて何度も言及。

村井知事は選挙後、ファクトチェックをする組織作りに意欲を示している。

さて、このように怒涛の勢いで日本社会の空気が変わっていったわけだが、宮城県知事選投開票日でもあった10月26日、全国一斉で「移民政策反対デモ」が開催された。

開催地は北海道から九州まで実に16箇所に及び、参加者はそれぞれ数千人規模にもなったという。私は新宿で開催されたデモを取材したのだが、「SAVE JAPANESE」「日本政府に殺される」「NO!移民政策」などのプラカードと並んで、9月に暗殺されたチャーリー・カークの顔写真の横に「日本はまだ間に合う」と書かれたものや、村井知事のイラストの横にデカデカと「土葬」と書かれたものもあった。デモに参加しているのは、老若男女の「普通」としか言いようのない人たち。

この日全国で開催されたデモの動画を見ても、参加者の中には女性も多く、ベビーカーを押す若いカップルや親子連れの姿もあり、「移民」に不安を感じる人々の「裾野」の広さを見せつけられた思いがした。

そんな移民政策反対デモに先駆けること4日、全国知事会の「外国人の受け入れなどに関するプロジェクトチーム」は、多文化共生社会の実現に向けた共同宣言を正式決定。

内容は、「外国人が増えると犯罪が増える」といった根拠がない情報や排外主義を強く否定し、国に正確な情報発信などを求めるものだった。

一方、11月7日には高市総理による台湾有事発言がある。

中国政府はこの発言に反発を強め、14日、日本への渡航自粛を呼びかけ。25年6月に輸入再開を発表した日本産海産物の輸入も事実上、停止に。

そうして11月末からは日本人アーティストの中国ライブが次々と中止に。

11月28日には上海での大槻マキさんのライブが途中で強制終了。「バンダイナムコフェスティバル2025」での一幕だが、翌日に出演予定だった「ももいろクローバーZ」の出演も中止に。29日の浜崎あゆみさんのコンサートも中止となった他、12月から公開予定だった「クレヨンしんちゃん」の映画も延期。12月19日から予定されていたミュージカル「セーラームーン」の北京公演も中止となったのだった。

そんな情勢の11月30日、またしても全国一斉「移民政策反対デモ」が開催される。

一方、12月12日には、茨城県八千代町で人権擁護や差別の禁止を目的とした人権条例が施行された。同町では外国籍の住民が1割を超えたことから人権意識の啓発が必要と判断したという。

そんな町がある一方で26年4月、茨城県は外国人を不法就労させている事業者を県に通報し、摘発につながれば報奨金一万円を支払う制度を5月から開始すると発表。

「不法就労をチクれば懸賞金か」など大きな批判が上がったものの、運用はスタート。そんな茨城県では24年、特定外来生物であるキョンの目撃情報に報奨金2000円を払う制度を創設しており、なんだか「不法就労の外国人」と「特定外来生物」が同列の扱いのようで非常に複雑な気持ちになったのだった。

12月16日には、外国人の不動産取得状況について把握するため、不動産移転登記時に国籍の届出を義務化するなど複数の施策が発表される。 

同時期、政府・与党は中長期の在留外国人が日本語や制度を学ぶための社会包摂プログラムを創設する検討に入る。また、永住許可の要件も厳しくするとし、新たに日本語能力を求める方向で検討していることも明らかになった。

年の瀬の12月にも移民政策反対デモはあちこちで起こり、クリスマスには三重県で外国人の採用を取りやめる方向で検討を始めることが報じられた。

そんな年末にワイドショーを騒がせたのは、千葉県銚子市のホテル。日本一早い初日の出が見えることで有名なホテルの経営が中国系に替わって休業状態か、などと報じられた。

25年の大晦日前日には、26年の年明け直後から「いじめ動画」拡散で話題となるデスドル創設者・磨童まさを氏がある記者会見を開く。それは紅白歌合戦にaespaを出場させないよう訴える会見。

中国籍のメンバーであるニンニンが過去、原爆をモチーフとしたランプをSNSに投稿したことを問題視し、「aespaの紅白出場停止」を求めて署名を集め、この日、14万筆を超える署名とともに記者会見をしたのだ。会見に同席したのは、この問題を国会で取り上げた日本維新の会の石井苗子氏。

ちなみに私はデスドルを始める前のまさを氏が10年ほど前にやっていたヴィジュアル系バンドのファンだったので、非常に複雑な気持ちでこれを見ていた。ちなみに彼はジャニーズ、V系、メンズ地下アイドルを経てデスドルを始めてそれが当たった人物。「手段を選ばない」現代的な典型として注視しているのだが、詳しくはこちらで書いたので読んでほしい。

さて、ニンニンだが、紅白はインフルエンザにより出演しないという結果に。

なんとも後味の悪い年末だった。

26年は年明けそうそう、トランプがまさかのベネズエラ攻撃で幕を開けた。

国内の話題はといえば、デスドルのいじめ動画が多くのメディアで取り上げられるなどしてまさを氏は「時の人」に。

そんな最中、まさを氏は突如としてへずまりゅう氏と「いじめ撲滅同盟」を結成。政治家を目指すと発信するなど、ある種の典型的な道を辿り始める。また、日頃外国人ヘイトをしているアカウントなどが、この頃はいじめ動画と加害者叩きに夢中になり、一瞬、外国人ヘイトが減ったかのように見えた瞬間もあった。

そうして1月23日、この国の外国人「統合政策」の根幹とも言える「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」が発表される。

内容はといえば、日本国籍取得や永住許可の厳格化、土地取得のルールのあり方、外免(外国運転免許証)切り替えの厳格化などが盛り込まれ、外国人の生活保護について「適正化」という記述もある。これまで書いてきたようなことの羅列だ。

そんな総合的対応策の「概要」で示された「基本的な考え方」の一行目は、以下。

「一部の外国人による、我が国の法やルールを逸脱する行為・制度の不適正利用について、国民が感じている不安や不公平感に対処する必要」

が、それがどのような行為であるかについては触れられていない。私は常々、外国人問題は今後、刑法違反と入管法違反とゴミ出しなどのルール違反が意図的に混同されて語られるだろうと指摘してきたのだが、まさにそのようなやり方と言える。

そんな総合的対応策、日本が「移民受け入れ」に大きく、そしてこっそりと舵を切った18年から毎年取りまとめられているのだが、18〜25年のものを読んでみて腰を抜かすほど驚いた。非常に「マトモ」だからだ。

例えば18年バージョンの「概要」冒頭には、「外国人材の適正・円滑な受入れの促進に向けた取組とともに、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備を推進する」とある。

25年版には「日本人と外国人が互いに尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会の実現を目指し、外国人がキャリアアップしつつ国内で就労して活躍できるようにすることなどにより、日本が魅力ある働き先として選ばれる国になるような環境を整備していく」とある。

内容も、「生活者としての外国人に対する支援」「外国人の目線に立った情報発信の強化」「外国人が抱える問題に寄り添った相談体制の強化」などが並び、さまざまなサービスの充実や環境整備が謳われていて、一言でいって非常に「優しい」印象を受けるのだ。

それがどうしたことだろう。昨年までは共生しよう、選ばれる国になろうと言ってた国が今年からいきなり喧嘩腰になって外国人を疑いの目で見始め、管理・排除・厳格化を進める強硬姿勢を剥き出しにしているのである。

そう思うと、今年の総合的対応策は「日本人ファースト」という言葉によって何かのタガが外れたこの国の、ひとつの行き着いた果てに見えてくる。

さて、1月には他にも福井県知事選にて参政党の支持を得た候補――「日本は単一民族」発言などがあった――が当選。

1月末に始まった衆院選では丸川珠代候補が第一声で「外国人が生活のエリアまで入ってきている」と発言し物議を醸した。

そうして2月8日、衆院選投開票日。結果はと言えば、自民党の圧勝で316議席を獲得。リベラル系野党が大きく議席を減らす中、参政党は15議席を獲得。

2月末には、アメリカとイスラエルがイランを攻撃。世界が震撼する中、ホルムズ海峡が封鎖される。

アメリカ・イスラエルの暴挙に対しては世界中から非難の声が上がり、2月末以降、日本でも全国各地に反戦デモが燎原の火のように広がっていく。

一方、「AI主導の戦争」の最中の3月5日、米企業パランティア・テクノロジーズのピーター・ティールが高市首相を表敬訪問。

3月24日には23歳の現役自衛官が中国大使館に侵入。建造物侵入や銃刀法違反などで逮捕された男は、「大使に日本への強硬発言を控えてほしいと伝えたかった」「受け入れられなければ自決しようと思った」と供述しているという。

3月27日には、入管から衝撃的な数字が発表される。

それは25年に強制送還された人の数(護送官同行)が、318人で過去最多だったということ。

難民申請中の人は強制送還しないというのが国際的なルールなのだが、申請中の人はわかっているだけで52人。25年5月に始まった「不法滞在者ゼロプラン」と排外的な世論が強制送還を後押ししたのだろう。

ちなみに「不法滞在者なんて送還されて当然」という意見もあるだろうが、その中に日本生まれ・幼少期から日本で生まれ育った子どもや難民申請中の人も含まれることが特に問題視されていることは覚えておいてほしい。

同日、難民申請において、「難民条約上の迫害に明らかに該当しない」に分類される人が前年比で20倍増えていることもわかった。明らかに難民ではないのにわざわざ申請する人がたった1年で20倍になることは考えにくく、やはりゼロプランの影響を指摘する声がある。

同じ3月27日、政府から、外食産業に大打撃となることが発表された。

それは、人手不足の分野で外国人労働者を受け入れる「特定技能1号」において、人数の上限が近づいているとして4月13日で外食産業の受け入れを原則停止するという発表。これを受けて、現場からは「ふざけるな」「国は何もわかっていない」など批判の声が多く上がっている。

4月3日には、この一年近く「日本が移民に乗っ取られる」という言説が一人歩きしたことへの「最悪のアンサー」のような事件が起きる。それは渋谷のスクランブル交差点の放火事件。50代の男が交差点に灯油を撒き、火をつけたのだ。幸いにも死傷者は出ず、自ら出頭した男は往来妨害の容疑で逮捕となったが、現場に持ち込まれていた段ボールには「日本はほぼ乗っ取られています」という言葉が書かれていた。

4月21日には、「福岡に外国人マンション」と一時期SNSで騒がれたマンションの建設計画が白紙となったことが発表された。

さて、これがここまでの1年近く、この国で起きたことだ。

ここからさらに海外に目を向けていくと、25年11月には「民主社会主義者」を名乗るインド系移民でイスラム教徒のゾーラン・マムダニ(34歳)がニューヨーク市長選に当選。家賃上昇の凍結や公営バスの無料化などを掲げ、物価高騰に苦しむ人々から絶大な支持を集めての当選だった。

その数日前の10月30日、トランプ大統領は難民受け入れを年間7500人にすると発表。その中でも、自身が「迫害されている」と語ってきた南アフリカの白人・アフリカーナーは優先的に迎え入れるとしている。ちなみにバイデン政権下での難民受け入れ上限は12万5000人というから、あまりにも凄まじい削減だ。

また調査機関ピュー・リサーチセンターによると、アメリカの移民数はトランプ大統領就任の25年1月から半年だけで100万人以上も減ったという。トランプ政権下で流入が減り、強制送還が増えたためだ。

11月27日には、トランプ大統領が途上国からの移民受け入れを恒久的に停止すると発表。ホワイトハウス周辺で発生した州兵銃乱射事件の容疑者がアフガニスタン出身だったことによると言われている。

そんなトランプ大統領、12月10日には米国へ渡航する観光客らに過去5年間のSNSの投稿の提出などを求める方針を明らかにし、また16日にはこれまで入国禁止・制限をしてた国を19カ国から30カ国以上に拡大する布告に署名。新たに追加されたのはシリアやブルキナファソ、マリ、ニジェール、南スーダンなど。

アメリカ以外に目を転じると、12月14日、チリの大統領選決選投票にて、「チリ・ファースト」を掲げる右派候補が勝利。移民に対して「自発的に出ていかなければ強制送還する」と迫り、ボリビアやペルーとの国境に壁を作ることを宣言するなど「チリのトランプ」と呼ばれる人物だ。

そうして26年初頭、先に書いたように世界はトランプによるベネズエラ攻撃と大統領拘束に驚かされたわけだが、1月にはアメリカで移民をめぐって2人、死者が出ている。移民取り締まりに抗議する市民が移民捜査官によって射殺されるという事件が立て続けに起きたのだ。あまりにも痛ましいが、米バンス副大統領は射殺された女性について「狂った左派」などと発言。

3月にはフランス統一地方選があり、パリでは中道左派の市長が当選(3月22日)。サンドニ市では、マリ系移民の家庭に生まれ、公営住宅の充実などを訴えた候補が当選する(3月15日)など「マムダニ効果?」と思われるような動きもあった。

一方、3月24日のデンマーク総選挙では中道左派が議席を減らし、「デンマーク人第一」を掲げる「デンマーク国民党」が躍進。

3月28日はアメリカで反トランプの「NO KINGS」デモが開催。全米3300箇所で800万人が参加。25年は700万人なので、参加者は100万人増加したことになる。

4月12日には、ハンガリー総選挙で大逆転劇が起きる。「自国第一主義」を掲げ、自らを「反グローバリスト」と呼び、リベラル嫌いを公言しLGBTQへの厳しい姿勢で知られる「欧州のミニトランプ」・オルバン首相が敗北、16年ぶりの政権交代となったのだ。

オルバン氏は欧米の右派から熱い支持を受け、トランプ大統領とは「盟友」と言われるほどの仲。選挙戦でトランプ大統領は、有権者がオルバン氏を支持すればアメリカの「経済力のすべて」をハンガリーに投入する用意があると述べ、またバンス副大統領はオルバン氏応援のため、わざわざハンガリーを訪れている。

が、まさかの敗北。勝利したのは46歳の党首が率いる新興野党の「ティサ(尊重と自由)」で、オルバン政権を痛烈に批判していた。

自国ファースト・反移民・反グローバル的なスタンスは長らく世界の右派のトレンドだったわけだが、これはその終了の兆しなのか、それとも例外的な事例なのか、今後も注視したい。

そうして5月7日、イギリス地方選挙で「反移民」を掲げるリフォームUKが最大議席を獲得。与党・労働党が大敗という結果となる。

そんなイギリスでは昨年11月、寛容と言われてきた難民政策が見直されている。これまで認定から5年で永住権申請ができたのが、20年になるなどの厳格化だ。背景には、住宅費や物価が高騰する中、難民のために負担が発生しているという不満があるようだ。

翻ってこの国も「失われた30年」の衰退と4年にわたる物価高騰による疲弊という現実がある。25年10月には、26年のGDPがインドに抜かれると報じられた。思えばこの国のGDPは最多だった94年、世界の18%をも占めていたという。が、今、世界のGDPに占める割合は、わずか3%台。衰退と没落の一途を辿っている。 

さて、ここまでが、「日本人ファースト」から1年で起きたことだ。

わずか1年で社会の空気は大きく変わり、かつそれは世界情勢と密接に絡み合っている。そして読んできてわかる通り、世界中で、排外主義とそれに対抗する勢力は拮抗している状態だ。 

ここから何ができるのか、一人ひとりが問われている。 

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