メリット1:他人の苦しみに「思いやり」をもてる
ショーペンハウアー哲学の出発点は、次のような考えです。
「長く持続する幸福というものは存在しない。
私たちが幸福と呼んでいるのは、苦痛や欲望から一時的に解放された状態にすぎない」
なんともネガティブな考え方で、彼が「悲観主義の哲学者」と呼ばれたのも無理はありません。
彼の考えは次のようなものでした。
私たちは空腹になれば食べ物を求め、孤独を感じれば人とのつながりを求め、何かを達成すれば次の成功を求めます。
ところが、1つの欲望が満たされても、その満足は長続きしません。
満足した直後には新しい欲望が現れ、それを追いかける苦しみが始まります。
そして欲しいものが何もない状態になれば、今度は「退屈感」に苦しめられます。
ショーペンハウアーにとって、人間の一生とは「満たされない欲望による苦痛」と「欲望が消えた後の退屈」との間を行き来するものでした。
アルトゥル・ショーペンハウアー/ Credit: ja.wikipedia非常に暗い人間観に思えますが、ここから重要な考えが導かれます。
それは「苦しいのは自分だけではなく、ほかの人も同じように苦しみながら生きている」ということです。
私たちは時に、他人の悩みを「気にしすぎだ」「努力が足りない」と簡単に片づけてしまいます。
しかし、悲観主義に立てば、苦しみは一部の弱い人だけが経験する例外ではなく、誰の人生にも存在する基本的な現実だと理解できます。
他人に思いやりを持つためには、その人の苦しみが現実のものであると認め、真剣に受け止める必要があるのです。
ショーペンハウアー自身も、思いやりこそが道徳の根源だと考えました。
誰もが苦しみ、その苦しみは本人にとって深刻であると理解することで、私たちは他人を安易に責めるのではなく、より優しく接することができるのです。
ショーペンハウアーの悲観主義は、人間嫌いにつながるものではありません。
むしろ、人生の苦しみを直視するからこそ、他者への思いやりが生まれるのです。






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