オーストラリア発、現在、世界で一番人気のアニメ「ブルーイ」を知っているだろうか。
子犬のブルーイと妹のビンゴ、父バンディット、母チリを中心に描かれる日常は世界140カ国で放送され、アメリカでは2024年、2025年の「最もストリーミングされた全番組総合1位」を獲得している。
子どもはもちろん、むしろより熱中しているのは大人たちかもしれない(筆者もその一人だ)。
ブルーイたちの生活の大半は、空想を膨らませ、何かになりきって演じる「遊び」の時間。豊かすぎて、時にカオスを招くその想像力には、ついゲラゲラ笑ってしまう。
一方「遊び」の中で不意に、別れ、譲り合う難しさ、嫉妬や孤独、子どもの成長する瞬間といったテーマも差し込まれる。切なくも美しい人生の瞬間は、大人たちの涙腺を崩壊させている。
さらに、チリとバンディットは「共働き」。舞台は現代で、仕事との両立の難しさや、子どもにアニメを見せる時間をどうコントロールするか、食品制限に厳しい家庭の子どもとの付き合いなど、今まさに多くの親子が直面している課題も、自然と物語には織り込まれる。それがこのアニメの新しさでもある。
ハフポスト日本版では、ブルーイの原作者、ジョー・ブラム氏に日本語媒体としては初となるインタビューを実施。ブルーイたちの世界をどう作り上げて行ったのかについて聞いた。

Ludo Studio
––ブルーイの世界にまず感じるのは、「子どもたちから見た世界」が解像度高く、作品に織り込まれているということです。あなたはどのようにブルーイたちの世界を作り上げていったのでしょうか?
ジョー: 基本的には自分自身の家庭をそのままモデルにしました。私にも作品と同じように2人の娘がいますが、上の娘はまさにみんなを引っ張るリーダータイプで、私たち家族をよく自分の遊びに巻き込んでいました。
下の娘はいつも喜んで参加していましたが、自分の意見を聞いてもらうのに苦労することもありました。この二人のおかげで、参考にするものを遠くまで探しに行く必要はなかったんです。

Ludo Studio
––ブルーイの作中では、子どもたちが、とにかくずっと遊んでいます。遊びを作品の軸に据えたのはなぜなのでしょうか?
ジョー: 主に観察から得たものです。うちの子どもたちは、ほとんどの時間を自分たちで考え出した遊びをすることに費やしていました。そうした遊びは、子どもたちの成長とともに進化していきました。私は後になって、その進化や遊びの中で培われていく能力を観察することを楽しむようになりました。
子どもたちの生活の中で、遊びは本当に興味深い要素です。私はそれぞれの遊びが持つさまざまな側面に、焦点を当てました。
たとえば「おみせやさんごっこ」で、子どもたちは全体の遊び時間の60%を、お店のルールや誰がどの役をするかの交渉に費やすことがあります。まるでその交渉自体が、遊びの楽しさの一部であるかのようです。

Ludo Studio
––ブルーイには、子どもがその生活の中で感じている「不公平さ」「嫉妬」「恐れ」といったネガティブな感情の全てが、きちんと描かれています。
例えば「キャンプ」は、ブルーイがキャンプ場で親しくなった友達が、ある日突然いなくなってしまうエピソードを通じて、人と人とのつながりの儚さ、特別な誰かが突然いなくなってしまうことを描いています。こうしたエピソードをどのように生み出してきたのでしょうか?

Ludo Studio
ジョー: たいていは自分自身がその感情を感じるところから始まります。その時の自分の人生で何かが起きていて、その感情が自然に湧き上がってくることもありますし、過去の記憶をたどって、その感情を呼び起こさなければならないこともあります。
そしてその感情が物語全体に滲み出るように、ストーリーを組み立てていきます。その感情は感謝の場合もあれば、様々な種類の傷や痛み、何かを恋しく思う気持ちであることもあります。
物語を通して何かを感じる方が、ただ考えるよりも好きなんです。考えることなら、もう十分すぎるほどしていますから。正直、ちょっとうんざりしているくらいです(笑)。
––「赤ちゃんレース」は、世界中の親たちの間で大きな話題になったエピソードです。子どもの発達に「早い・遅い」という優劣をつけることへの静かな批判がありながら、一方で、ハイハイやお座り、歩き出す時期などを他の子と比べてしまう気持ちを止められないという親の性(さが)というものも映し出していて、複雑な感情を揺さぶられました。あのエピソードを作ったきっかけや、込めたメッセージを教えていただけますか?

Ludo Studio
ジョー: 妻の経験がベースになっています。妻は最初の娘が生まれた時から、ずっと焦りの中にいました。家族や頼れる人たちから遠く離れた場所にいて、初めての育児を手探りでやろうとしていました。
このエピソードから色々なことを感じてもらえたら嬉しいですが、一番伝えたかったのは「大丈夫だよ、何とかなる」ということです。
子どもは親の延長ではありません。ひとりの独立した小さな人間で、自身のペースで成長していきます。子どもたちが求めているのは、親であるあなた自身なんです。

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––ブルーイとビンゴの両親、バンディットとチリは、子供たちと存分に遊んでくれます。一方で、バンディットは隙あらばラグビーの中継を見ようとするし、チリは一人でビーチを歩いたりもします。2人は、子どもの世界を広げてあげながら、自分の世界も大切にしている。日本では長い間、特にお母さんは、子どものために自分を完全に犠牲にすべきだという規範がありました。今は、少しずつ薄れたり、揺り戻したりしています。こうした親の葛藤をブルーイに意図的に盛り込んだのでしょうか?
ジョー: そうですね。ただ、そこまで広い視野から考えていたわけではないんです。むしろ、目の前にあったこと、妻や私、身近な人たちがやっていたことをそのまま書いただけなんです。
私たちは、自分の20代を旅に出たり、好きなことをしたりして自由に過ごせた最初の世代でした。そこに突然子どもが生まれて、自分のしたいことは後回しにしなければならなくなった。
もっと若くして子どもを持った年長世代よりも、その衝撃が大きかったのかもしれません。だからこそ、少しの逃げ場や息抜きを求める気持ちも強かったのではないでしょうか。

Ludo Studio
––テーマパークから疲れ果てて帰ってきたバンディットとチリが、ソファに倒れ込みながらもブルーイたちの遊びに付き合う回があります。「完璧な親」ではなく「疲れた大人が一生懸命やっている」という現実を描くことへの、あなたのこだわりを聞かせてください。
ジョー: 私はよく、できれば居心地の良い場所にうつ伏せになって、できるだけ動かなくて済む遊びを探していました。あるとき偶然見つけたのが、私が赤ちゃんになって、子供が布団に寝かしつけてくれるという遊びです。大人が赤ちゃんのふりをするというのは、ちょっと情けなくもありましたよ。でも、あれは至福の30分間でした。
親になってからは疲れていることは多かったけれど、子供たちを笑わせたり、夢中になって遊んでいる姿を見たりすることが、やっぱり大好きだったんです。

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––バンディットは、家事も育児も積極的に担うお父さんです。日本ではまだ「育児は母親の仕事」という意識が根強く残っている地域もあります。バンディットのような父親像は、意図的に描かれたものなのでしょうか?
ジョー: いいえ、これも、ただ家での出来事をそのまま描いただけです。私は何年もの間、自宅で仕事をしていたので、家の中のことをかなりしっかりやっていました。その度合いは、自宅で働けるかどうか、どれだけ忙しいかによって年々変わりましたが。
でも、毎日やるべきことが山ほどあって、それをするのは妻と私の2人しかいない。だったら、目の前にある仕事を手に取り、とにかく取りかかろう、という感じでした。
––ブルーイがこれほどのグローバルヒットになった理由について、あなたはどう考えていますか?オーストラリア発でありながら文化の違いを超えて届く、その普遍性の核心はどこにあると思いますか?また、そうした広がりを最初から意識してストーリーに練り込んでいたのでしょうか?
ジョー: 4歳から6歳の子どもの心は、世界中どこでもほぼ同じだと思っています。
社会の中での生き方を学びながら、周りの世界をできる限り正確に真似て再現しようとする、本当に面白くて、不条理で、でも魅力的な年齢です。それと同じように、親たちも全く新しいことに向き合い、学ぼうとしている、ということなんだと思います。

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––日本は今、少子化・高齢化という深刻な課題に直面しています。現役世代の負担が増す中、子育てへの不安やプレッシャーを感じている親や若者が多くいます。そんな日本の読者・視聴者に、ブルーイを通じて伝えたいことがあれば、聞かせてください。
ジョー: 考えすぎないこと(笑)。それが一番やってはいけないことです。
心から愛すことができ、大変なことから逃げない人を見つけたら、思い切って飛び込んでみればいいんです。私はもっとたくさん子どもが欲しかったくらいです。不安を感じたり、圧倒されたりすることは絶対にある。
でも見返りとして、小さなやんちゃな子どもたちが人生に現れて、たくさんの喜びを与えてくれます。それまでどれほど悩んでいたことの、半分ぐらいはどうでもよくなりますよ。
––日本では6月12日から「ブルーイinシネマ」第2弾が公開予定で、2027年には長編映画公開もアナウンスされています。ブルーイの世界では、今後どんなことが起こりますか?
ジョー: 今、この長編映画に全力を注いでいます。ブルーイのファンにとって、これまでとはまったく違う新しい体験を届けたいと思っています。

Ludo Studio

1 週間前
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