
この記事の要点
- トランプ氏が覚書署名、民間企業のサイバー作戦参加を可能に
- 仮想通貨詐欺も対象、被害額は全米で1.7兆円超
仮想通貨詐欺も対象、米が官民連携を拡大
ドナルド・トランプ米大統領は2026年8月12日、越境的なサイバー犯罪組織(TCO)への対抗能力を拡大する国家安全保障大統領覚書(NSPM)に署名しました。
これにより、審査を通過した米国の民間企業が連邦政府の指揮・監督のもとで、海外を拠点とする犯罪組織へのサイバー監視・妨害作戦を担う新たな枠組みが設けられます。
大統領デジタル資産諮問会議のパトリック・ウィット事務局長は同日、Xへの投稿で、こうした官民連携が仮想通貨(暗号資産)を悪用した詐欺への対策にもつながるとの見解を示しました。
Cybercrime cost Americans nearly $21B last year, up 26% YoY and climbing, with about a third of it involving crypto.
Today, President Trump signed an NSPM empowering the private sector to work with the U.S. government to go on offense against the transnational criminal orgs… https://t.co/MWVW3qYNQY
— Patrick Witt (@patrickjwitt) August 13, 2026
(前略)トランプ大統領は本日、国家安全保障大統領覚書(NSPM)に署名し、こうした犯罪を行う越境犯罪組織(TCO)に対抗するため、民間企業が米政府と連携して攻勢に出ることを可能にしました。
(中略)今回の措置は仮想通貨に特化したものではありませんが、仮想通貨を悪用して米国民を狙う詐欺師や犯罪組織を取り締まるうえで、大きな一歩となります。
米国では仮想通貨をめぐる詐欺を含むサイバー犯罪の被害が拡大しており、海外を拠点とする犯罪組織への対策が急務となっています。
3カ国合同で詐欺拠点9カ所を解体
被害3兆円超、米政府が民間企業とサイバー対策
厳格審査と保証金、民間参加の条件を明示
覚書によると、民間企業が参加するサイバー作戦は大統領令14159号に基づく国家調整センター(NCC)が運営し、司法省と国土安全保障省が任命する共同事務局長が承認を統括するとしています。
作戦への参加を希望する企業は、いずれかの省と契約したうえで、技術力や実績、施設の安全性などを確認する厳格な審査を通過する必要があります。
企業には契約の履行を担保する仕組みも設けられており、実施指針では契約違反時に没収される100万ドル(約1.6億円)以上の保証金について、維持を契約条件として課す場合があると定めています。
作戦対象はサイバーを利用した越境犯罪組織(CE-TCO)に限定されており、米国人や米国内のシステムに影響が及ぶ場合には、司法省の審査を含む事前承認が必要となります。
こうした条件や承認手続きを具体化するため、共同事務局長には覚書の署名から60日以内に運用手順を策定するよう指示されており、民間企業による作戦はその後に始まるとしています。
仮想通貨被害が急増、全米で1.7兆円超
米政府が従来の法執行に加えて民間企業の作戦能力を取り込む背景には、FBI(連邦捜査局)が2026年4月に公表した2025年インターネット犯罪報告書で明らかになったサイバー犯罪被害の急増があります。
同報告書によると、IC3(インターネット犯罪苦情センター)に寄せられた苦情は100万8,597件にのぼり、被害総額は前年比26%増の208億7,700万ドル(約3.3兆円)に達しました。
なかでも仮想通貨(暗号資産)に関わる被害額は113億ドル(約1.8兆円)を超え、サイバー犯罪による被害総額の半数以上を占めています。
こうした被害の拡大を受け、今回の覚書では従来の法執行や制裁に加えて、民間企業の作戦能力を新たに組み込むとしています。
大統領令から覚書へ、サイバー対策が段階拡大
今回の覚書は、トランプ大統領が2026年3月6日に署名した大統領令14390号「米国市民を狙うサイバー犯罪・詐欺・略奪的手口への対抗」を踏まえ、これまで進めてきたサイバー犯罪対策をさらに拡大しています。
その後の2026年4月には、米国・中国・ドバイの合同作戦で東南アジアなどの詐欺拠点9か所が一斉に解体され、少なくとも276人が逮捕されました。
米財務省も2026年6月、詐欺組織Huione Groupやプリンスグループへの制裁に踏み切り、関連インフラも押収されたと報じられています。
こうした政府主導の摘発や制裁に続き、新たな覚書では承認を受けた民間企業も海外の犯罪組織に対するサイバー作戦に参加できるようになります。
暗号資産詐欺対策を業界に要請
ミャンマーは終身刑も、世界で詐欺対策強化
国境を越えて拡大する詐欺への対策は各国で厳しくなっており、ミャンマーでは2026年7月、詐欺に最高で終身刑を科す反オンライン詐欺法案が可決されました。
米国でもサイバー犯罪への法的措置が相次いでおり、悪質な画像の悪用から利用者を守るTAKE IT DOWN法では、2026年4月に初の有罪判決をもたらすなど、法律に基づく取り締まりが実際に行われています。
米国が新たに導入する官民連携は、こうした規制や摘発とは異なる手段で海外の犯罪組織に働きかけるもので、仮想通貨を悪用した投資詐欺への対策にも活用される見通しです。
民間企業が担う作戦の範囲や承認手続きなどの詳細はまだ決まっておらず、共同事務局長が覚書の署名から60日以内に運用手順を策定する予定となっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159.41 円)
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