人気テーマ株の裏で眠る「割安株」、“バリュー投資”はどう見極める?「五感を鍛えゆっくり育てる」かぶ1000さんの投資哲学

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投資を始める人が増える一方で、「投資しないと取り残される」という焦りや、SNSの情報に振り回される人も少なくない。

そんななか、累計利益9億円超を築いたベテラン個人投資家・かぶ1000さんは、38年間投資を続けてきた最大の理由は「株式投資が楽しいから」だと話す。

かぶ1000さんは、中学2年生で株式投資を始め、証券会社への就職の誘いを断り、専業投資家の道へ進んだ根っからの投資家だ。『貯金40万円が株式投資で4億円』『賢明なる個人投資家への道』(ともにダイヤモンド社)の著書を持つ。Xのフォロワーは38万人を超え、個人投資家の間で絶大な支持を集める。

みんなが見過ごしている割安株をどう見つけるのか。決算書やチャートだけでは分からない、企業の「今」をどう見極めるのか。そして、家族ぐるみで投資を楽しむ秘訣とは。後編では、かぶ1000さんの現場主義の投資術と、これから投資を始める人へのメッセージを聞いた。

投資ブームの裏で進む「二極化」

―新NISAをきっかけに投資熱が広がり、「投資しないと取り残される」という空気もあります。この風潮をどのように見ていますか。

投資を始めるきっかけとして、NISAやiDeCoのような制度が広がるのはよいことだと思います。

ただ、全体を見ると、貯蓄がない世帯が約2割ある時代です。物価もどんどん上がっているので、「投資する余裕なんてない」という人も少なくありません。一方で、積極的に資産を増やしている人もいて、二極化が進んでいると感じます。

もちろん、元手がある人の方が有利なのは事実です。でも、誰もが最初からまとまった資金を持っているわけではありません。私も、お年玉を貯めたお金が元手でした。

だからまずは、自分にどれだけのお金や資産があるのかを正確に把握して、それをどう育てていくかを考えることが大切だと思います。これからの時代は、そういう視点がますます重要になってくるでしょう。

というのも、今は給与の伸びより物価上昇の方が速い。所得が増えても、それ以上に物価が上がれば、お金の価値は実質的に目減りしてしまいます。それを補う手段の一つが資産運用であり、株式投資だと私は考えています。

投資は畑と同じ。時間をかけてゆっくり育てる

 ―投資というと、短期間で大きく増やそうとする方も多い印象です。SNSでも「○○万円儲かった」といった情報があふれていますが、そうした情報とはどう付き合うべきでしょうか。

みんな勘違いしがちなのが、短期間で儲けようとすることです。でも、それは非常に難しい。「数年で○億円」といった見出しをよく見かけますが、再現性はほとんどありません。短期間で誰でも大金持ちになれるなら、誰も苦労して働かないですよね。

投資で大切なのは時間をかけて、ゆっくり育てていくことです。短期間で大きく儲けようとすると、失敗する確率が高くなる。少しずつ長期で続ける方が、結果的には資産も育っていきます。

私は畑で作物を育てていますが、種をまいて次の日に実がなることはありません。でも、時間をかければ、よほど失敗しない限り芽が出て実をつけます。投資もまさに同じなんですよ。

だから私は、「できるだけ早く始めること」が大事だと思っています。早く始めるほど、長く運用できて、複利の力を生かせますから。

また、最初は少額から始めることも大切です。投資は失敗することもあります。最初から大きなお金を入れてしまうと、失敗した時に「もう二度と投資なんてやりたくない」となってしまうことも。それでは、その後に得られたかもしれないリターンまで失ってしまいます。

今は単元未満株などを使えばさらに少額から始められますし、手数料が無料の証券会社も増えています。少しずつ投資額を増やしていけばいい。まずは、なくしても生活に支障がない範囲のお金で始めて、一攫千金を目指さないことが大事です。

もう一つ大切なのは、自分に合った投資手法を見つけることです。私のように四季報を読んで個別株に投資する人もいれば、インデックス投資や優待株投資、高配当株投資が向いている人もいます。

モメンタム投資やグロース投資は、先行きを予測しなければならないので私には難しい。私は頭がいいわけでも、先見性があるわけでもありませんから。プロ野球選手を目指すのは無理でも、草野球なら趣味として楽しめる。そのくらいの感覚で、自分に合った投資を続けることが大切だと思っています。

―初心者は決算書や四季報のどこを見るといいのでしょうか。

決算が良いか悪いかももちろん大事ですが、私が一番見ているのは、その利益が継続するかどうかです。

だから私は、極端に利益が伸びている会社よりも、毎年1桁後半から10%前後の増益を続けている会社に注目します。派手さはありませんが、その方が長続きすることが多いと思っています。

また、その期だけではなく過去も見ます。例えばリーマンショックやコロナ禍でも赤字にならなかった会社は、強い企業です。増益率だけを見るのではなく、「利益を長く積み上げられる会社か」「不況でも利益を出せる会社か」。私はそこを重視しています。

決算書だけでは分からない、現場の「今」の情報

―決算書だけではなく、実際に株主総会などへ足を運ぶことも大切にされています。その理由を教えてください。

リアルタイムの情報を、自分の目で確かめられるからです。例えば、投資先の会社がスーパーや外食店を経営しているなら、実際に店舗へ足を運ぶことで、お客さんの混み具合や商品の売れ行き、接客の様子など、決算書だけでは分からない一次情報を得ることができます。

もちろん決算書も大事です。でも、決算書に載っているのは2〜3カ月前の情報なんですよね。一方で、現場に行けば「今」の情報が分かる。そこが大きな違いです。

私は株主優待銘柄を取引するための口座も持っていて、株主優待券を使って実際にお店へ行きます。お客さんがたくさん入っていれば「まだこの会社は大丈夫だな」と思いますし、逆に人が減っていたり、「味が落ちたな」と感じたりしたら、「そろそろ売ろうかな」と判断することもあります。

初心者の方にとって、決算書や四季報を読み込むのはハードルが高いと思います。だからまずは、お客さんが入っているか、店が活気づいているかなど、誰でも分かるところを見ることから始めるとよいと思います。そうやって普段から会社の実態を見ていると、「この会社なら、このくらいが適正な価値だろう」という自分なりの基準ができてきます。

そうすると、株価だけを見て一喜一憂しなくなるんですよね。株価はどんな会社でも上がったり下がったりします。でも、会社の本質を見ていれば、高値で飛びついたり、下がった時に怖くなって売ってしまったり、といった行動を避けやすくなると思います。

五感を鍛えると「違和感」に気づける

―ご著書『賢明なる個人投資家への道』(ダイヤモンド社)では「五感を鍛えること」を勧められています。その理由を教えてください。

目で株価ばかり見ていると疲れてしまいますよね。だから私は、実際に現場へ行ったり、その会社のサービスを利用したり、株主総会で経営者や株主の様子を見たりすることを大切にしています。そうやって視野を広げることが、五感を鍛えることにつながるんです。

例えば旅行は、お金も時間もかかるのでコストパフォーマンスだけを考えれば決して良くありません。それでもみんな旅行に行くのは、空気のおいしさや肌で感じる風、その土地の静けさなど、五感でしか味わえない体験があるからだと思うんです。

投資も同じです。そういう感覚を養っていくと、「何か違和感がある」と肌で感じられるようになります。

例えば、リーマンショックの頃に倒産したある小売企業がありました。私の知り合いは倒産の数日前に「この会社は危ない」と気づいていたんです。理由を聞くと、「店に行けば分かるよ。商品棚がガラガラで、品ぞろえもバラバラだったから」と。実際、その数日後に倒産しました。

やはり現場に行くと分かることがあるんですよね。だから私は、一次情報を取りに行くことを大切にしています。ネットには情報があふれていますが、それが本当に正しいかどうかは分かりませんから。

「何から勉強すればいいですか」とよく聞かれるんですが、私は株式投資は勉強というより経験だと思っています。赤ちゃんも、いろいろなことを経験しながら自然に覚えていきますよね。それと同じで、まずは自分で経験してみること。その一つひとつを腑に落としていくことが、最終的に力になると思っています。

半導体一色の相場で見つけた「見過ごされていた割安株」

―先日Xで「ポイ捨てされた銘柄をしっかり拾えたので良かった」と発信されていました。そうした“見過ごされている銘柄”は、どのように見つけているのでしょうか。

ここ最近は、本当に半導体株一色の相場でしたよね。だから逆に、半導体以外の銘柄はかなり割安になっていたんです。

株式市場は資金が循環するので、みんなが半導体関連に集中すると、それ以外の銘柄が“ポイ捨て”される。「半導体じゃないから、もういらない」というような雰囲気が、今年の5月から6月は特に強かったですね。

私にとっては、そういう状況はむしろありがたいんです。みんながブランド品に一極集中している一方で、同じくらい品質がいいのに見向きもされない銘柄がたくさん出てくる。そういう銘柄を探して投資しています。

実際、半導体株が調整に入ると、それまで見向きもされなかった割安株にも資金が流れてきました。7月(7月14日時点)はで約4000万円のプラスになっていますが、半導体株から他の銘柄へ資金が移る流れも、大きな追い風になったと思っています。

―実際に、ここ数カ月で「市場で見過ごされている」と感じて投資した銘柄の中で、特に成果につながったものはありますか。

現時点で一番リターンが大きかったのは、GMOインターネットグループです。今年3月に株価が大きく下がりました。この会社は上場子会社を12社抱えているのですが、それらの持ち分の時価総額が約5500億円あったにもかかわらず、親会社の時価総額はその半分程度しかありませんでした。

いうならば1000円分の株券が入った財布が500円で売られているような状態だったので、「これはさすがに割安だな」と思って株を買ったところ、約2カ月で44%のプラスになっています。結果的には、自社株買いを発表したことも大きかったですね。それは事前には分かりませんでしたが、あれだけ割安なら、会社も何らかの株価対策を打ってくる可能性はあるだろうとは考えていました。

また、当時はイラン情勢の影響で相場全体が下落していましたが、この会社はインターネット・金融関連なので、原油価格の影響を大きく受けない業種でした。それでも市場全体につられて売られ、本来の価値より低く評価されていた。そこが投資のチャンスだったと思います。

投資は家族の会話も変える

―かぶ1000さんは、ご家族も株式投資をされているそうですね。

 両親にも株式投資を勧めるようになり、父は約1億円、母は約2億円運用しています。いずれも元手は数百万程度からのスタートでした。自分がコツコツと投資を続けてきたこともありますし、人に説明する時には、「なるほど」と腑に落ちるまで伝えることも大事だと思っています。

例えば、私がイライラしながら株をやっていたら、家族は「株って怖いものなんだ」と思ってしまうじゃないですか。でも私は、暴落が来ると「安く買える」と、むしろワクワクしながら株を買っています。だから、かみさんも息子も暴落が来ると喜んでいますよ。

―息子さんも投資をされているのですね。

息子が高校生の頃から、「株をやったほうがいい」と話していました。最初は少し株を持っているだけでしたが、社会に出て自分の給料を入金するようになってから、お金に対する感覚が大きく変わったように思います。今では自分なりの投資スタイルもできていて、楽しみながら運用していますね。

最近資産が3000万円を超えたと言っていました。私からは投資資金を1円も渡していません。全部、自分で働いて稼いだお金で運用しています。私とは全然違って、IP関連の企業が好きなんです。ゲームなど、自分がよく知っている分野だから、そういう会社に投資しています。やっぱり、自分が理解できるものに投資することは大事だと思います。 

今から始めるなら「身近で流行り廃りのない会社」を選ぶ

―もし今、かぶ1000さんが20代で投資を始めるとしたら、どんな企業に注目しますか。

不確実性をできるだけ減らすことが、投資では一番大事だと思っています。私は先見性があるタイプではないので、将来を予測しなければいけない分野では勝負しません。むしろ、身近で流行り廃りが少ない会社に注目します。

例えば「サトウのごはん」でおなじみのサトウ食品は、上場時から株価は約10倍になっています。派手ではありませんが、こうした身近な企業を長く持つことが大事だと思います。

妻も2006年から株式投資を始めましたが、U-NEXT HOLDINGSやトリドールホールディングス、FOOD & LIFE COMPANIES、良品計画など、自分がよく知っている製品やサービスを提供している会社を長く保有し、資産を大きく増やしてきました。

 株式投資は社会を見る視点を増やす

―最後に、「良い投資家が増えること」は社会にどんな意味があると思いますか。

株式投資では、いろいろな立場から物事を見る必要があると思うんです。経営者、株主、従業員、お客さん。それぞれの立場を知るという意味では、「三方よし」という言葉がありますが、それを実感できるのが株式市場だと私は思っています。

今の時代、従業員は「給料を上げてほしい」と言い、株主は「配当を増やしてほしい」と言う。経営者にも経営者の考えがあります。それぞれ自分の立場で物事を見ていますが、投資家になると、それぞれの立場を一歩引いてバランスよく考えられるようになるんです。そこが株式投資のよいところだと思います。

また、ある程度資産が増えてくると、万一自分がリストラや病気などで働けなくなった時の安心感も大きくなります。配当など、労働収入とは別の収入の柱ができることで心にゆとりが生まれ、「少しお金を使ってみようかな」という気持ちにもなる。それが消費につながり、経済を回すことにもつながる。そういう意味でも、株式は社会の循環を支える大切な役割を果たしていると思っています。

私の家族はみんな株式投資をしているので、ニュースで何かが話題になると、「どこの会社がやっているんだろう」とすぐ調べるんですよ。「この会社は上場しているのかな」とか、行列のできているお店を見れば「何を売っている会社なんだろう」と気になる。そうやって、世の中を見る視点が自然と増えていくのです。

株を持つことで、世の中を見る視点が一つ増える。それが、株式投資の面白いところだと思っています。

 ※本記事は、事例として取り上げた金融商品の売買を勧めるものではありません。本記事に記載した情報によって読者に発生した損害や損失に関しては、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

※インタビュー日:2026年7月14日

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