中国観光客減少でインバウンドビジネスはどう変わる? 花王が福岡1店舗で出荷14.5倍を実現した、新たな“勝機”の見つけ方

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高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁から半年が経った。日中関係の冷え込みから、4月の中国からの観光客は前年同月比56.8%の減少となり、かつての「爆買い」の喧騒も街から遠のきつつある。日本のインバウンドビジネスを、今どう再構築していけばいいのだろうか。

4月に東京で開催されたグローバル市場に関するフォーラム(NOVARCA主催)。そこに登壇した花王やコーセートラベルリテール、ukaのキーパーソンたちが語ったのは、特定の国に依存せず、市場を「分散」させることで見えてきた新しい成長戦略だった。

「依存しすぎていた」という反省。いま必要なのは“分散”

「中国からの観光客が減ったから、インバウンド事業は控える、というのは違うと思うんです」

セッションの口火を切ったのは、フォーラムの主催者であり、グローバル事業の成長を支援するNOVARCAの濱野智成さん。同氏は、現在の状況を「これまでの中国依存から脱却し、ターゲットを多角化するチャンス」だと捉えている。

「むしろ、これまでは一国に依存しすぎていたとも言える。いま必要なのは、リスクを分散しながら、着実に別の市場を拓いていくことです」

花王の小林恵美氏
花王の小林恵美氏

ハフポスト日本版

福岡のドン・キホーテ1店舗で起きた「出荷14.5倍」の奇跡

その「分散戦略」の成功モデルとして注目を浴びたのが、花王の小林恵美さんが紹介した韓国人観光客向けのプロジェクト。

ターゲットにしたのは、「炭酸の効果で血の巡りをよくする冷却脚用シート」というヘルスケア商品。

花王は、東アジアに根付く「心身の気血を循環させる」という思想をフックに、特に韓国人観光客で賑わう「福岡」に狙いを定めた。

驚くべきは、その絞り込みの徹底ぶり。展開したのは、福岡の中でも特に免税売上の高い、ドン・キホーテの「たった1店舗」だった。

日本で活動する韓国出身のインフルエンサーとタッグを組み、現地の感性に突き刺さるコンテンツを作り上げ、店頭のサイネージをジャックするように展開した。店頭の反響は花王の出荷数にもダイレクトに表れた。

「めぐりズム炭酸脚シート」の出荷数は、企画実施前3週間の平均34個に対し、実施後3週間は平均496個へと跳ね上がった。実に14.5倍。この数字が「証拠」となり、その後、韓国本国での商談も一気に進んだという。

小林さんは語る。「1店舗に絞ったからこそ、確実な『勝ちパターン』を作ることができた。スモール、スタート、スピーディー。これこそが、変化の激しい今の時代の成功の秘密です」

ukaの小笹和洋氏(左から3人目)は「日本には日本独自の成分を使った良いものがたくさんある。その魅力を伝えたい」と話した。
ukaの小笹和洋氏(左から3人目)は「日本には日本独自の成分を使った良いものがたくさんある。その魅力を伝えたい」と話した。

ハフポスト日本版

2026年、インバウンドの形はどう変わるのか?

会場からは、2026年の訪日客数の見通しについても質問が飛んだ。コーセートラベルリテールの木瀧寛人さんは「中国が重要で優先度の高い国であることは変わらない」と前置きした上で、こう強調した。 「課題は中国への依存度を、どこへ、どうシフトさせていくか。そのバランスが問われています」。

中国という巨大市場の存在感は依然として大きい。しかし、政治や社会情勢に左右されない強靭なビジネスを作るためには、今回の花王の事例のように「特定のターゲット」を絞り込み、その場所で確実な成果を出す柔軟さが求められている。

インバウンドは「量」の時代から、緻密な戦略に基づく「質」と「分散」の時代へ。東京で開かれたこのフォーラムは、日本のグローバル戦略の確かな転換点を感じさせるものとなった。

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