中学2年生で株式投資を始めてから38年。証券会社への就職の誘いを断り、専業投資家の道へ進んだ根っからの投資家で、『貯金40万円が株式投資で4億円』『賢明なる個人投資家への道』(ともにダイヤモンド社)の著書を持つかぶ1000さん。Xのフォロワーは38万人を超え、個人投資家の間で絶大な支持を集める。
相場の流行に流されず、企業の本来の価値よりも安く放置された銘柄を見極めるバリュー株投資を続け、税引後の累計利益は9億円を超えた。
ゲームソフト売買で学んだ「安く買って高く売る」
―かぶ1000さんが実践されている投資手法について教えてください。
私が実践しているのは、企業の本来の価値に対して株価が割安な銘柄を探して投資する「バリュー株投資」です。実は、この考え方の原点は、小学生の頃の経験にあります。
当時ファミコンが流行っていたのですが、うちは貧乏でゲームソフトを買ってもらえなかった。それで、いろんなお店を見て回ったんです。すると、同じゲームソフトでも店によって値段が違う。
ある店では1000円で売っているものを、別の店では1500円で買い取ってくれることもあったんですよ。その価格の差を利用して私は、安い店で買って、高く買い取ってくれる店に売り、差額(利ざや)を稼いでいました。
結局、今のバリュー株投資も考え方は同じなんです。「この会社なら、本来はこれくらいの価値があるはずだ」と自分なりに考えて、その価値よりも市場価格が安く放置されているなら、その株を買っておけば損をする可能性は低いんじゃないか、と。小学生の頃にやってきた経験が、そのまま株式投資につながっているんですよね。
あとは、図書館でたまたま目にとまったベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』(パンローリング)を読んでみたら、自分が考えていたことと同じことが書かれていたんです。「やっぱりこの手法で間違っていなかったんだ」と確信して、それ以来、ずっとバリュー株投資を続けています。
―かぶ1000さんが実践されているバリュー株投資は、初心者にも始めやすいでしょうか。
私の投資法で初心者におすすめできる点は、リスクが限定されていることだと思います。割安な価格で投資することで買った価格から半分になったり、3分の1になったりする可能性は非常に低いからです。
例えば、半額のお弁当がさらに半額になって、またさらに半額になることは、まずないですよね。それと同じで、割安なものは下がる余地が限られていて、伸びしろの方が大きい。そこがバリュー株投資のメリットです。
その代わり、何十倍にもなるような銘柄は少ない。でも、まずは大きく負けないことが大事なんですよ。負けが続いてしまうと投資が楽しくなくなり、資金も少なくなるため次の経験も積めなくなってしまいます。
だから、保守的にいく。保守的というのは、割安でコストパフォーマンスのいいものを選ぶことです。そう考えると、やっぱりバリュー株投資なのかなと思います。
難しく考えず、単純なことを守ることが大切なんです。安いところで買って、高値で飛びつかない。言葉にすると簡単ですが、その場にいると周りの雰囲気に飲まれてしまう。だから、一歩引いて見られるかどうかが大事です。
人生は長いですから、焦る必要はありません。きちんとルールを守り投資を続けていけば、それなりに成果が出るのが株式投資だと思っています。
私は、投資は楽しみながらやるものだと思っています。お金を増やすことだけを目的にすると、思うように増えなかった時に嫌になってしまう。でも、楽しみながらやっていれば、一時的にうまくいかない時期があっても続けられるんですよね。
それと、なくしてはいけないお金を投資に回すと、値下がりして損をした時の精神的なダメージが大きくなります。だから、投資は余剰資金で行うことも大切です。
割安株は「値引きシールが貼られたお弁当」と同じ
―中小型株投資は、耳馴染みのない企業名が多く、とっつきにくい印象があります。どういうところに注目すると良いのでしょうか。
バリュー株投資は、日常生活でいう「コスパ」に近く、お値打ちなものを探す感覚です。私はスーパーや百貨店で半額になった総菜が大好きですが、株式投資もまさにそんなイメージです。
PBR(株価純資産倍率)という指標があって、PBR1倍は会社が持っている純資産と株価が同じ状態を指します。でも、日本の株式市場にはPBR1倍を下回る企業が結構あります。
私の中では、PBR1倍がお弁当の定価だとすると、PBR0.5倍は半額シールが貼られている状態なんです。だから、お値打ちなものを買うという日頃の感覚が、そのまま株式投資にもつながっています。
企業価値を見極める、かぶ1000流の銘柄選び
―初心者はどの銘柄を選べばいいか分からない、という声も多いです。
自分がよく知っている会社から投資を始めるのがよいと思います。まずは身近なところから始めて、徐々に視野を広げながら、銘柄を入れ替えていく。そうやって段階的に進めるのがよいと思います。
もう1つ大事にしているのは、日々のブームやテーマに乗らないことです。最近は半導体関連銘柄が注目されて、SNSでも「1日でいくら儲かった、損した」という投稿がたくさんありますよね。でも私は、日々の値動きやテーマはほとんど気にせず、自分がいいと思ったものを軸にしています。
私は半導体について詳しくないから、関連銘柄をほとんど買いません。その分野について詳しくないと、企業の良し悪しを判断できないし、変化にも気づきにくい。結果として、下落時に逃げ遅れたり、高値で飛びついてしまう可能性があります。
だから私は、自分に馴染みのある企業や、会社の資産価値に着目する「資産バリュー株」を中心に見ています。今ある会社の価値と株価を比べて判断できるので、未来を予測する必要がありません。
株は「これから伸びる」という期待で買われることが多いですが、先行きを正確に予想するのは難しいものです。その点、私が持っている株は今の状況を基準に判断できるので、大きな利益は出なくても、大失敗する可能性は非常に低い。リスクとリターンのバランスがいいと思っています。だからこそ、資産の大部分を株式に投じることができるんです。
要するに、自分がよく知っている企業に投資すること。そして、どんなにいい会社でも、高い値段では買わないこと。優良企業でも、割高な状態では株価が上がる余地は小さくなります。
―自分のよく知っている企業で、かつPBRが低い水準が狙い目、ということでしょうか。
PBRが低ければいい、というわけではありません。例えばPBR0.2倍だからといって、必ずしも割安とは限らないんです。お弁当で言えば、PBR0.2倍は80%引きのシールが貼られた状態です。一見すごくお得に見えますが、中身が傷んでいたり、自分にとって必要のないものでしたら意味がありませんよね。
大事なのは、会社が持っている資産の中身です。PBR0.2倍でも、資産の大半が売れ残りの在庫ばかりでは魅力はありません。一方で、PBR0.5倍でも、有価証券や都心の一等地の不動産など価値の高い資産を多く持っている会社なら、私は間違いなく後者を選びます。
だからPBRの数字だけを見るのではなく、その会社がどんな資産を持っているのかまで確認することが大切です。
―資産の中身はどのように確認していますか。
基本は、有価証券報告書などを見るようにしています。初心者の方にはハードルが高いかもしれませんが、最近はAIに「この会社の資産内容を教えてください」と聞くとある程度は教えてくれます。AIに聞く際には情報源も併せて確認することが大事ですが、ざっとどういうものかは教えてくれます。
会社が持っている資産には、10年、20年と長期間保有している土地なども多くあります。そうした資産は短期間で大きく変わるものではないので、価値を継続的に把握しやすく、判断もしやすいんです。
5歳からのお年玉貯金が人生を変えた
―そもそも、かぶ1000さんと投資との出会いを教えてください。
私の両親は自営業で、決して裕福な家庭ではありませんでした。それを子どもの頃から実感していたので、「お金で苦労する人生は嫌だな」と思っていたんです。それで、5歳の頃からお年玉など全部貯金していました。
当時、郵便局の定額貯金の金利は年利7.12%(1980年4月時点)もあって、預けっぱなしで複利運用すると10年後には2倍になるような、今では考えられない時代でした。中学2年生の時、その定額貯金が満期を迎え、40万円くらいまで増えていたんです。
もう一度預けようとしたら、ちょうどバブル経済が終焉に向かうタイミングで、金利が1.68%まで急激に下がってしまった。どうしようかと思っていた時、母方の祖母が営んでいた喫茶店で新聞を見ていたら、株式投資信託の利回りが載っていて、中には年率30%を超えるものもあったんです。
「こんなに利回りのいい商品があるんだ」と思って買おうとしたんですが、どこで買えるのか分からない。それで、株式投資をやっていた父方の祖父に相談したら、「それは証券会社じゃないと買えないよ」と教えてくれました。
さらに祖父から、「投資信託は証券会社が手数料を稼ぐための商品みたいなものだから、本当に株をやりたいなら、自分で銘柄を選んで買った方がいい」と言われたんです。
両親も自営業だったので、その考え方にはすごく納得しました。商品には利益が上乗せされるのが当たり前ですからね。それで、自分で銘柄を選ぶかたちで株式投資を始めたんです。
株を持つことは、会社の一部を持つこと
―38年間、相場の浮き沈みを経験しながらも投資を続けてこられた最大の理由は何でしょうか。
単純に、株式投資が楽しいからというのが一番大きいですね。フランスの経済学者トマ・ピケティさんが著書『21世紀の資本』(みすず書房)に書いているように、資本主義社会では資本を持つ側に立つことが大事だと思っています。ただ、自分で起業するのは簡単ではありません。だったら、上場企業の株を買って会社の一部を持つ。「パーシャルオーナー」という考え方ですね。
その感覚を持っていたので、投資をやめようと思ったことはありません。もちろん銘柄の入れ替えはしますが、資産の大部分は今でも株式です。
「投資は危険」「リスクが高い」という人も多いですが、私はむしろ株式を持っている方が安全だと考えています。
昔はデフレで円高だったので現金を持っていても問題はなかった。でも今は円安とインフレが進み、現金だけでは資産価値が目減りしてしまいます。その点、株式は売らなければ税金はかかりませんし、保有コストも掛からない。そういう意味で、資産として持つには株式が一番適していると思うので、ずっとやめずに続けています。
※本記事は、事例として取り上げた金融商品の売買を勧めるものではありません。本記事に記載した情報によって読者に発生した損害や損失に関しては、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。
※インタビュー日:2026年7月14日

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