
2024年8月4日、ウクライナ国内の非公開の場所に設置されたパトリオット防空ミサイルシステムの上空を、ウクライナ空軍のF-16戦闘機が飛行している。(AP通信/エフレム・ルカツキー撮影、資料写真)
By John T. Seward – The Washington Times – Thursday, July 9, 2026
【キーウ】トランプ米大統領は今週、ウクライナが米国製防空システム「パトリオット」の製造ライセンスを近く取得する可能性があると表明した。しかし、実際にウクライナ国内でパトリオットの生産が始まるまでには、なお数年を要する可能性がある。
パトリオットを製造する米防衛大手RTXとロッキード・マーチンの2社は、現時点でウクライナ企業と提携し、同国内に生産施設を建設する計画を明らかにしていない。
パトリオットは飛来するミサイルを迎撃する防空ミサイルで、固体ロケットモーターを使用する。ホワイトハウスは米国の防衛産業全体に対し、この重要部品の増産を指示しており、国防総省は生産能力拡大に10億ドル超を投じている。
米政府当局者の1人はワシントン・タイムズに、米国内の固体ロケットモーター生産が逼迫(ひっぱく)していることは「誰もが知る事実だ」と語った。
ウクライナが周辺国と提携して生産を進めたとしても、同じ課題に直面することになる。
トランプ氏は今週、トルコ・アンカラで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、この問題について言及し、生産体制にはなお多くの課題が残っていることを認めた。
同氏は8日、「これは攻撃用ではなく、防御のためのものだ。『自分たちで製造すればいい』ということだ。まだ企業側には伝えていないが、最終的にはうまくいくだろう」と述べた。
ロシアによる弾道ミサイル攻撃が激化する中、ウクライナは防空能力の強化を急いでいる。首都キーウへの相次ぐ攻撃では、ここ数日だけで少なくとも50人が死亡した。ゼレンスキー大統領も最近、パトリオットの追加供与が必要だと強く訴えている。
ウクライナでは、パトリオットはロシアの弾道ミサイルに対抗できる最も信頼性の高い防空兵器として広く認識されている。実戦でその性能は証明済みであり、イスラエルやペルシャ湾岸諸国でも重要な防空システムとして運用され、イラン製ミサイルの迎撃に大きな役割を果たしている。
しかし、仮にウクライナ国内にパトリオットの生産工場が建設されても、ロシア軍にとって最優先の攻撃目標になるのは避けられない。さらにロシアの脅威以外にも課題は多く、専門家は短期間での生産開始は困難だとみている。
米シンクタンク、新米国安全保障センター(CNAS)の上級客員研究員で、投資会社MVPベンチャーズの顧問でもあるジョナサン・ルー氏は、生産ラインからミサイルがすぐにでも出荷されるようになるとは考えていない。
同氏は「ライセンスの取得そのものが制約ではない。最終的な制約となるのは産業界の生産能力だ。それはロッキード・マーチンのような元請け企業だけの問題ではない。2次、3次、その先の下請け企業まで含めたサプライチェーン(供給網)全体の問題だ」と指摘した。
大手防衛企業がミサイル製造に応じたとしても、重要な化学材料の供給が依然として大きな課題となる。そうした原材料の供給能力は既に限界に近い。
ルー氏は、ウクライナや周辺国で生産した場合についても「結局は同じ問題に突き当たる。同じ少数の下請け企業に依存するプログラムに、さらに追加発注することになるだけだ」と述べた。
米国の防衛産業基盤も同じ問題を抱えている。防空システムへの世界的な需要が高まる中、固体ロケットモーターに不可欠な過塩素酸アンモニウムを米国内で製造する唯一の工場は、生産能力の限界まで稼働している。
ルー氏は「理想的な防衛産業基盤はピラミッド型であるべきだ。頂点に大手企業があり、その下には同じ部品を複数の企業が供給する裾野の広いサプライチェーンが広がる。しかし現状では、特に重要なプログラムについては、非常に縦長の構造になってしまっている」と説明した。
主要メーカーは、イスラエルやウクライナなどへの供与で減少したロケット、ミサイルの備蓄を補充するため、米国内で数百万ドル規模を投じて新たな生産ラインの建設や既存設備の増強を進めている。国防総省と連邦議会も、防衛企業に対し完成品をできるだけ早く納入するよう求めている。防衛業界によると、米国のロケット供給網の生産能力は2026年中に、大型固体ロケットモーターで現在の約6倍、小型戦術用固体ロケットモーターでも少なくとも約3倍に達する見通しだ。
しかし、ウクライナには今後数カ月以内に必要となるミサイルを生産するための基盤は存在しない。
ルー氏は「ホワイトハウスがロッキード・マーチンかRTXとの契約締結を実現できれば、その時点からようやく時計が動き始めることになる」と語った。

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